この記事の要約はこんな感じです!
- 筋膜は5種類ある!
- 自分でできる筋膜リリースは浅層筋膜だけ!
- なぜ筋膜が硬くなるのか
- 効果的な筋膜リリース方法とタイミング
- 筋膜リリースは疲労回復効果なし!
- 筋膜リリースはウォーミングアップに効果的!
筋膜リリースが日本に入ってきたのは25年くらい前になりますが、一般的にも5年前くらいから爆発的に流行していますね。
フォームローラーやトリガーポイントなどを使ってセルフケアをしている方も多いのではないでしょうか?
これらのツールは非常に使いやすいのですが、実は、使い方によっては全く効果がありません。
時間のムダです。
また、筋膜リリースを謳うツールやセルフケア方法には、筋膜リリースとは程遠いことをしているようなものも多いです。
治療家に関しても、筋膜を知らずに適当に触っている”エセ治療家”も増えています。
筋膜リリースが流行ったことによる悪影響ですね。
効果的に自分のケアをするためにも、少し筋膜について勉強していただくのも良いかと思います。
筋膜についての基礎知識や効果的にツールを使用する方法をスポーツ認定理学療法士である私が、いくつかの研究結果も踏まえて解説したいと思います!
前半で少し筋膜自体を深掘りして解説しますが、効果的な筋膜リリースの使用法についてだけを知りたい方は後半まで飛ばしてください。
*fascia研究者の方からすると用語の定義など厳密には違う!という意見もあるかもしれませんがご容赦ください。
目次
筋膜とは?
筋膜で覚えてほしい2種類の筋膜

ざっくり言うと、筋膜とは”筋肉を包む膜”のことですが、実は筋膜には5種類ほどあります。
- 表層筋膜
- 深層筋膜
- 筋外膜
- 筋周膜
- 筋内膜
ここでは皮下脂肪内にある表層筋膜と筋肉につながる深層筋膜について少し理解していただければと思います。
それぞれが少し違う役割を持っているので、どちらにアプローチをしたいのか少し意識を持っていただくとコンディショニングがより意味のあるものになってくるかと思います。
浅層筋膜の特徴

浅層筋膜は皮下脂肪内に存在しています。
フォームローラーなどの筋膜リリースツールでコンディショニングできるのはこの表層筋膜です!
主な特徴は以下です。
- 皮膚と共に全身を包む
- 皮膚の下で自由に皮下脂肪や筋肉が動くための組織
- 血管や神経も支持していたり、体液の流れも作り出す
ちなみに手の甲には浅層筋膜が存在するため、スルスルと皮膚が滑りますが、手のひらには浅層筋膜が存在しないため皮膚が滑りません。浅層筋膜が硬くなると手のひらみたいな状態になるとイメージするとわかりやすいかと思います。
浅層筋膜が硬くなると、
- 筋肉が動きづらくなる
- 皮膚への血液循環が悪くなり、冷え性、キズの治癒が上手くいかない要因になる
- むくみの原因になる
といったことが起こります。
深層筋膜の特徴

深層筋膜は筋肉の表面を包む膜です。
主な特徴は以下です
- 筋と筋どうしがお互いに滑れるようにする
- 筋の付着部になることもある
深層筋膜が硬くなると筋肉どうしがくっついてしまい動けなくなってしまうようなイメージです。
フォームローラーなどではうまく刺激することができないため、深層筋膜の問題はセルフコンディショニングすることはできないと思います。
的確に深層筋膜の滑走性を取り戻すには専門家による治療が必要だと考えています。さまざま手技がありますが、fascial manipulation®︎(筋膜マニピュレーション)と言うイタリア発祥の手技はとても良いので、もし信頼できる筋膜治療家に施術してもらいたい方はfascial manipulation®︎の講習を受講した方を探すか、下のリンクから認定を受けている施術者のいる施設で施術を受けてみてください。
fascial manipulation®︎の国際認定者(外部サイトへ飛びます):https://fascialmanipulation-japan.com/fascial-manipulation-実施施設紹介/
なんで筋膜って固くなっちゃうの?
筋膜が硬くなる要因はさまざまですが、大体は以下の要因によるのではないかと思います。
- 運動不足
- 高強度の運動をしたことによる炎症の治癒過程
- 手術など直接的な侵襲
- 打撲や筋断裂などのケガによる治癒過程
- 水分不足
何かしらのダメージがあって治癒過程で硬くなったり、水分が不足や運動不足などによる循環の不足で膜がカラカラに乾燥して動かなくなってしまうイメージです。
浅層筋膜の効果的な筋膜リリースのやり方
適切な圧の加え方
先にお伝えした通り、フォームローラーなどのツールでコンディショニングができるのは、浅層筋膜になります。
そのため、効果的な筋膜リリースをしたければ、浅層筋膜に対してアプローチをしていくことが重要になります。
浅層筋膜は皮下脂肪内にありますので、強い圧は必要ありません。
筋肉の上の皮下脂肪を指でつまんでみて、その指でつまめた中に浅層筋膜がありますから、組織が圧迫されれば良いくらいの圧です。
皮膚を少し押し込むくらいの圧で十分です。
筋肉をしっかりと圧迫するのは強すぎます。

手や足を利用して圧をコントロールし、圧迫し過ぎないように気をつけましょう。
圧が強すぎると筋肉自体を痛めてしまい、コンディションを整えるどころか逆効果になってしまいます。
適切な時間について
適切な実施時間は、浅層筋膜であれば ”柔らかくなるまで” もしくは、”浅層筋膜の痛みが取れるまで” が適切かと思います。
ただし、長くても1分程度あれば十分です。
それ以上の圧迫は逆に炎症を引き起こしてしまう可能性もあるので、短時間でOKです。
1分ほどで部位を変えながら実施して行くのが良いと思います。

フォームローラーなどのツールの効果

リカバリーに効果なし!?
さまざまな研究結果からはフォームローラーはリカバリーには効果はないとされています。
疲労感や血中の炎症値の値をフォームローラーを実施した人としていない人の群で比較したところ、両者の間に差がなかったのです。
そのため、運動後にフォームローラーでコンディショニングをしても次の日の疲労感の軽減にはならないというのが科学的には正しいです。
これは私自身としても実感としてあります。
トレーニング後にフォームローラーで筋膜リリースをしても、マッサージほどの疲労軽減効果は感じられず、やらなかった場合と体調の変化は感じません。
フォームローラーを疲労軽減のためのマッサージがわりになんとなく利用されている方は、やめた方が良いでしょう。
しかし、あくまで研究上の話なので、もし自分や指導している選手が練習後にフォームローラーでコンディショニングすると調子がいい!というの実感があるのであれば、無理に止める必要はないと思います。
柔軟性向上には効果的
リカバリーには効果がない一方で、練習前の可動域の向上には効果的であるというデータがあります。
練習時やトレーニング時に可動域を大きく使って効果的な練習を行えるように、ウォーミングアップとしてフォームローラーで筋膜リリースを行うのは効果的です。
可動域を上げたい関節の周囲の筋肉に対して、上記の圧や時間の筋膜リリースを実施すると、効率の良いトレーニングが実施できそうです。

筋膜リリースのまとめ
重要なポイントをまとめます!
- 筋膜は5種類ある
- 筋膜リリースで狙うのは浅層筋膜
- 浅層筋膜は皮下脂肪内にあるので、圧はそこまでいらない
- 時間も1分程度で良い
- フォームローラーは練習後のリカバリーには不向き
- フォームローラーを練習前のウォーミングアップに使うのは効果あり
筋膜リリースは非常に効果的なコンディショニング方法ですが、全てにとって良いわけではありません。
効果のあるところに効果の出る方法で実施することで、有限な時間の中で最大の効果を発揮することができます!
このブログを参考にして、自分にとってより良いコンディショニング方法を見つけてください!
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【参考文献】
Carla Steccoら:Hyaluronan within fascia in the etiology of myofascial pain,Surg Radiol Anat (2011) 33:891–896
Thimo Wiewelhoveら:A Meta-Analysis of the Effects of Foam Rolling on Performance and Recovery,Front Physiol(2019 )9;10:376